信州と大阪の“こころ”の距離がぐっと縮まった一夜!「信州とガチで対話する~これからのヒトモノコトの交流」レポート記事

事例紹介 

2024年2月1日にThe DECKで開催された長野県産業労働部産業立地・IT振興課主催の対話型のミートアップイベント。今回は、長野ではなく大阪がイベントの舞台。

今回は少人数開催でしたが、県内外から30名の方にお集まりいただきました。おかげさまで満席状態に。現地で活躍しているキーパーソンから、長野にゆかりのある大阪在住の方、長野でワーケーションをしたことがある方、県職員など、さまざまな方が来られて当日は熱気に包まれました。

<プログラム内容>
クロストーク 
  関西目線で「長野を語る」
ピッチトーク 
  信州と関西でどんなつながりできるか妄想ピッチ
グループディスカッション 
  会場参加者と探る信州とのツナガリしろ

関西目線からみた「長野」の魅力とは?

まず、全国のワーケーション推進活動を行う「一般社団法人日本ワーケーション協会」の代表理事である入江氏からスタート。ご自身が代表を務めている組織の取り組みについて説明いただきました。

入江 真太郎(いりえ・しんたろう)氏
長崎生まれ。幼少期には東北や関東、学生時代は四国と関西地方に暮らす。京都・同志社大学社会学部卒業。現在は大阪府在住で京都を事業拠点とする。(株)阪急交通社等で旅行業他様々な業種を経験後、ベンチャー企業から独立起業を経て、観光事業やその他海外進出支援事業等を展開。北海道から沖縄まで、各地と関わりを深めていく。各地で暮らした経験から地域共創や豊かなライフスタイルや働き方の実現に関心が高い。2022年より信州リゾートテレワーク・コーディネーターとして、関西と信州の往来を頻繁に行っている。子ども環境情報紙エコチル西日本エリア開発室長。

新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、全国的に普及したリモートワークやワーケーション。一般社団法人日本ワーケーション協会は、個々の豊かなライフスタイルを実現できる1つの手段と捉え、「リモートワーク、ワーケーションを通した豊かなワーク&ライフスタイル実現の一環へ」「新たなワーク&ライフスタイルを通した地域共創」をビジョンとして掲げています。

「一般社団法人日本ワーケーション協会は2020年2月に立ち上げた組織で、今では245の宿泊施設やコワーキングスペース、旅行会社と連携しております。そのなかでも軽井沢は2番目にできた拠点で関係性が深い」とコメント。

その後、お話しいただいたのは長野県産業労働部 産業立地・IT振興課の清滝氏。

清滝 葵(きよたき・あおい)氏
長野県産業労働部 産業立地・IT振興課1992年生まれ。長野県出身&在住。地元の信州大学卒業後、地元の長野県庁に就職。福祉系、バックオフィス系の部署を経験した後、ソフトバンク(株)へ研修派遣。コロナ禍でのフルリモート環境下で、CSR部門業務と初めての東京生活を経験する。2022年度からは、県庁産業労働部産業立地・IT振興課で信州リゾートテレワーク業務を担当。

信州リゾートテレワークは、全国的にリモートワークが普及する2020年よりも前に長野県が推進しているプロジェクトです。

「職場や住んでいる場所から、信州に場所を一定期間移し、信州ならではの豊かな自然や食べ物などの魅力に触れてもらうことで、関係人口の創出や拡大を目的としています。現在、テレワークの受け入れ施設は長野県内に100以上で、他自治体と比べても多いのが特徴です」とコメント。

さらに「このあとお話しいただく田村さんもそうですが、長野で活躍するプレイヤーには関西から移住された方も多くいらっしゃいます」と清滝氏。

ここから、いよいよ話は「関西からみた長野の魅力」のテーマへ移ります。

俵谷 龍佑(たわらや・りゅうすけ)氏
ライティングオフィス「FUNNARY」代表。1988年生まれ、東京都府中市出身。旅をしながら働くライター。大手広告代理店に新卒入社後、2015年4月にライターとして独立。現在は、小規模事業者のECサイトのSEO対策、BtoBの領域を中心としたメディアのディレクションや立ち上げ業務など、記事コンテンツ制作にまつわる業務全般を担う。2021年6月に京都へ移住。日本全国のワーケーションやコワーキングスペース巡りが日課。

2021年に、小谷村で1ヶ月間ワーケーションをした京都在住のライターの俵谷氏は長野の魅力について次のようにコメント。

「小谷村の栂池(つがいけ)高原にあるゲストハウスに、9月頭から10月頭にかけて滞在していました。標高は800mほどだったため、窓からの風だけでクーラーなしで十分過ごせました。暑いのが苦手な方にぜひおすすめしたいです」

実は西日本には標高2,000mを超える山がないんだそう。西日本で一番高い山が愛媛県の石鎚山で標高は1,982m。つまり避暑地を求めるとなると、東日本に目を向けることになると、入江氏は話します。

「大阪や京都の夏は西日本でも特に暑いといわれています。特に、2023年は異常気象の影響もあり、40度近くまで気温が上昇した日も。暑さを逃れるなら軽井沢や白馬といった標高が高いエリアを検討する必要があります」

2024年3月16日には北陸新幹線延伸の金沢〜敦賀区間が開業。これによって、さらに早く長野まで行けるようになります。

「例えば、京都駅〜長野駅間は2時間50分にまで短縮されます。2025年以降には敦賀〜新大阪間の着工も計画されているので、関西地方から長野・信州へアクセスする心理的ハードルはグッと低くなるでしょう」

とはいっても、長野県の面積は日本で4番目に広い県です。標高2,000m以上の場所もあれば、標高300m前後の場所もあります。

清滝氏は「自身の好みによってエリアを選べるのも長野県の魅力です。白馬などは積雪量が多いですが、長野市は標高が330mで、雪はほとんど積もりません」とコメント。

長野県は“ストレス”を減らせる場所

次のセクションでは、実際に長野で活躍されているキーパーソンの田村氏と野澤氏に、自身の活動や長野の魅力について語っていただきました。

京都市出身の田村氏は、まちづくりやソーシャルビジネスなどの事業を手掛けられています。2017年に長野県千曲市へ移住。現在は、千曲市で「レボ系ワーケーション」、「温泉MaaSプロジェクト」、「日本遺産『月の都 千曲』多角的事業支援」など、さまざまな取り組みをされています。

田村 英彦(たむら・ひでひこ)氏
株式会社ふろしきや 代表取締役/まとめ役京都府京都市生まれ。2017年1月より長野県千曲市在住。(妻:長野市出身)2代続くベーカリーを営む家に生まれ、店のある商店街と母方の生まれ祇園の街で幼少時代を過ごし、多様な大人に囲まれながら育つ。学生時代から文化祭、団体スポーツなどの人が力を合わせて目標に向かう瞬間を愛し、現在に至るまで一貫してマネジメントの領域で腕を磨き続けている。 そして、「地域×マネジメント」の領域に挑戦するため、ふろしきやを創業。ソーシャルグッドを生み出し続ける人の関係性づくり、それを支える場づくりや人流創生のプラットフォームづくりなど、長野県を中心により楽しく前向きに地域課題や社会課題と向き合える社会づくりに関わり続けている。

「もともと、千曲市では2019年から参加者や地元住民などで構成される団体『ワーケーションまちづくり・ラボ』を主体として、ワーケーションイベントを開催してきた背景があります。しかしながら、台風19号そして新型コロナの影響で来客が減っていました。そこで、『レボ系ワーケーション』というネーミングで新たに始動しました」と田村氏。

今では、ワーケーション参加者が行政や観光局や宿泊施設、鉄道事業者を巻き込み、「温泉MaaSプロジェクト」や「NEOネオン」など多種多様なユニークなプロジェクトが誕生しています。

「2024年1月に、長野県8地域と連携して、しなの鉄道の観光列車『ろくもん』や 『SR-1』車両を3日間貸し切る『トレインワーケーション』を実施しました。長野は沿線の人口減少によって無人駅が増えていますが、この状況を逆手に取ればテクノロジーの改革が進めやすいという見方もできます」とコメント。

話は変わり、長野名物のB級グルメの話題に。田村氏は「この食べ物を知っている人はいますか?」と、クイズ形式で参加者に問いかけます。

「これはおやきという長野のソウルフードなんです。最初、知らなくて大判焼きかなと思って食べたら、野沢菜や茄子などの野菜が入っていてびっくりしました(笑)あんこ、なす、野沢菜、かぼちゃなど、いろいろな種類があるんですよね。小麦粉やそば粉で作られた皮のなかに野菜が入っているわけだから、実は栄養満点な完全食なんですよね。

あと、千曲市には大根おろしに浸して食べるご当地グルメ『おしぼりうどん』があります。来られた際はぜひ食べてほしいです」と田村氏。

さらに「長野県はストレスを減らせる場所です。自然も豊かですし、たくさん温泉があって、自分のお気に入りの場所を探せます。ストイックに働く方も、ちょっと息抜きしたい方にも良い環境なので、ぜひ興味をもってもらえたらうれしいですね」とコメント。

作り手になれる街、プロトタイプ作りの街

もう1人のパネリストである野澤氏は長野県辰野町出身、地元の町役場に入庁し、現在は産業振興課に所属しています。2023年には、全国の自治体や住民グループに地域づくりの指導や助言をする内閣府の「地域活性化伝道師」に登録されました。

野澤 隆生(のざわ・たかお)氏
辰野町産業振興課商工振興係長、内閣府地域活性化伝道師。小中高を静岡市で育ち、大学を卒業後2001年に辰野町に入庁し、50以上の事業を立ち上げ。プレイヤー同士を有機的に繋ぎ、社会的事業を創出する支援を一貫して行う「まちづくりのカタリスト」。100人を超える「まちづくりプレイヤーエコシステム」の醸成を実現。地域を持続可能にするため、関係人口、移住人口及び共に地域を創る共創人口・共創パートナー(企業)を増やし、官民連携・民民連携を推進。通称「はじまりのひと」。趣味はグルメ、温泉、サーフィン、バイク、海釣り。

辰野町は長野県のほぼ真ん中に位置し、大阪から電車で3時間弱ほど。観光資源としてはホタルが有名で、日によっては2万匹出ることがあるといわれています。

「辰野町のうち85%が森林です。豊かな自然環境がある里山として、近年は特にクリエイターの方から注目が集まっています。物件の賃料も安く、空き家もあるため、移住の問い合わせが増えています。2021年には『住みたい田舎ランキング』にもランクインしました」と、野澤氏。

かつて、辰野駅周辺にあった下辰野商店街は、全盛期には約200もの店があったといわれています。しかし、現在ではシャッターがしまっているお店も少なくありません。

「2019年12月、駅前商店街再生を目的に行った『トビチmarket』をきっかけに『トビチ商店街』のプロジェクトが始動。地元の人だけでなく、県外の店舗を誘致するなどした結果、現在では33まで店舗・事業所が増えました」とコメント。

辰野町でさまざまなプロジェクトが立ち上がった結果、多種多様なプレイヤーが集まっており「面白い人が面白い人をよぶ」状態になっているのだそう。

「関係人口だけでなく、一緒に何かを作っていける共創人口も増やしていきたいです。辰野は作り手になれる街、プロトタイプ作りの街だと思います。何かチャレンジしたい人や自分のお店をもちたい人は、ぜひ一度、辰野町に足を運んでもらえたらうれしいです」と野澤氏。

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2時間半にわたって行われた本イベント。それぞれのパネリストの言葉に熱い長野への想いがこもっていただけでなく、参加者の方々の前のめりな姿勢と、関西圏の方と長野の方との交流が活発に生まれたのも、まさに「信州とガチで対話する」というイベントタイトルそのままという感じでした。

信州リゾートテレワークは、これからも県内外のビジネスパーソンとの多様な交差点を生み出していきたいと考えています。同サイトや公式SNSを通しての今後の発信にもご期待下さい。