リアルな場で人とアイデアが交差した3時間!初開催のビジネスカンファレンス「クリエイティブコネクト」レポート記事【前編】

事例紹介 

11月17日に開催された長野県産業労働部産業立地・IT振興課主催のビジネスカンファレンス「クリエイティブコネクト」。秋の軽井沢を舞台に行われた人とアイデアが交差する本イベントの様子をレポートしていきます。

イベントが開催されたのは、軽井沢町。会場となった軽井沢プリンスホテルウエストでも、宿泊者に向けたワーケーションプランが展開されるなど、リゾートテレワークが根付いているエリアです。

今回は、県内外から80名の参加者が集まりました。

また、リゾートテレワークのカンファレンスらしく、メイン会場の外には緊急用のワークスペースも。オンラインミーティングや急用の作業対応などがある参加者のための手配もバッチリです。

長野県でもテレワーク環境の整備が進むなか、開催された今回のプログラム。記事では当日の様子を振り返っていきます。

プログラムは以下の通りです。


キーノート
 「Work From Anywhere~国内企業の変革と世界の潮流」
パネルディスカッション
 「北陸新幹線延伸でぐっと近づく関西ー信州の多様な可能性」
ブレイクアウトセッション 
 ①ワーケーション・テレワークという働き方が実現しないのはなぜ? 
 ②仕事を「オモシロ」がることでオモシロい事業が生まれる 
 ③新しい価値をつくる越境人材とその活かし方とは

今、世界のテレワーク事情は? 潮流を捉える基調講演

浅生 亜也氏
株式会社サヴィーコレクティブ代表CEO / PerkUP株式会社共同代表CEO
株式会社サヴィーコレクティブ代表CEOならびにPerkUP株式会社共同代表CEO。また、Travel x Tourism x Technologyをテーマにした国際会議WiT Japan & North Asiaの共同創業者。英国国立ウェールズ大学経営修士修了。イシンホテルズグループで30軒以上のホテルをリブランドし再生した後、2007年より独立しアゴーラ・ホスピタリティーズを創業。全国で13軒のホテルや旅館を展開。2011年にアゴーラ・ホスピタリティー・グループ(東証一部)となり、創業から10年目に退任。2017年よりSAVVY Collective創業。京都・妙高・箱根・軽井沢でリゾートやホテルを運営。2020年、同社の新規事業としてPerkUPを創業し、企業のオフサイト・合宿のマッチングプラットフォームco-workation.comを運営。

カンファレンスは、国内ホテルのブランディングをおこなう株式会社サヴィーコレクティブ 代表CEO / PerkUP株式会社 共同代表CEOの浅生亜也氏のキーノート(基調講演)からスタート。
「Work From Anywhere~国内企業の変革と世界の潮流」をテーマに国内企業と世界のワークスタイルについてのインプットが行われました。

コロナ禍をきっかけにリモートワークや「オフィス以外の場所を選んで働く」価値観が広がり、数年前からよく耳にするようになった「ワーケーション」という働き方。

実は2012年に実施されたオンライントラベルの国際カンファレンス「WiT JAPAN&NORTH ASIA」において、「ワーケーション」や「ステイケーション」といった言葉が既に話題になっていたのだそう。

そしてコロナ禍を経た今、浅生氏は海外を渡り歩きながら仕事をして暮らす“デジタルノマド”に着目。Airbnb利用者の約20%の人たちが1ヶ月以上の滞在をしているというデータがあることから、「世界に目を向けると、日本はワーケーションの受け入れ側として、1ヶ月以上の長期滞在を見込めるようなインフラ整備の必要性を感じています」とコメント。

また、ホテルのリブランディングに携わり、法人の企業研修を受け入れる立場でもある浅生氏。テレワークにおける、チームビルディングの必要性に言及しました。

「あるアメリカの調査会社のリサーチによると、リモートワークにおいて共同作業できる環境にないことに苦労を感じている人が40%もいるというデータがあり、問題視されています」。フェイストゥフェイスミーティングの効果と生産性の向上にも触れた浅生氏。アメリカでも、法人のオフサイトミーティング需要が急速に伸びているといいます。

さらに、浅生氏はチームビルディングを目的とした研修合宿により、12%だった離職率を1%まで低下させることができた企業の事例を紹介。町の人と交流したり町の仕事を手伝ったりすることで自然とチームビルディングがおこなわれるプログラムの効果を、実体験とデータを踏まえて紹介していただきました。

ホテル運営や企業のオフサイトのマッチングに取り組む浅生氏。トップランナーとして活躍する彼女ですが、、その取り組みの本質は新しいものではないのだとか。

「ギリシャの哲学者にとっての庭園や、ルネサンスの知識人にとっての郊外の別荘のように、文化や交流の発展はオフサイト(職場を離れた環境)から生まれるもの。コロナ禍で生まれた潮流を捉え、日本の地方や観光業界の発展に貢献したい」と締めくくりました。

パネルディスカッション:北陸新幹線沿線で「関西と信州」の関係性の変化は? 

テレワーク需要の背景と国内宿泊施設に関する現状をインプットしたあとは、パネルディスカッションへ。

「北陸新幹線延伸でぐっと近づく関西ー信州の多様な可能性」をテーマに、2024年に金沢から福井・敦賀まで延伸予定の北陸新幹線によって起こる変化についてディスカッションが繰り広げられました。

ファシリテーションは上村瑶子氏。
パネリストとして御友重希氏、入江真太郎氏、松本栄祐氏、そしてキーノートで登壇した浅生亜也氏が並びました。
(写真左から)

上村 遥子氏
SUNDRED株式会社EVP, CIEO(Chief Interpreneur Engagement Officer) 兼 Chief Evangelist/株式会社天地人 事業開発
IoT・ものづくり支援スペースのコミュニティマネージャーを経て、公的機関・民間でのスタートアップエコシステム支援は歴7年以上。共創、コミュニティ、テクノロジーなどをキーワードに150以上の企画、登壇を実施。世の中に多くの挑戦者を増やすことを人生ミッションに、パラレルキャリアを歩む。JAXAベンチャーでは、衛星データ活用の社会実装を推進。新産業共創を進めるため、社会起点の越境人材=インタープレナーコミュニティで業界、世代間越境を促進。2022年に長野市移住。

御友 重希氏
デジタル田園都市国家構想(デジ田)応援団員 co-founder
尾張名古屋生。三女二男の父。米国でMBA/日本で経済学士。大蔵/財務省で主計・ 主税・理財・国際局、伊ローマ大使館、官邸秘書官経て、英チャタムハウス、G7時 環境省、G20時金融庁、内閣官房デジ田実現会議事務局、官民交流でNRI出向等。 主な研究・論考として、 『コロナ危機を乗り越え「レジリエントなニューノーマル」に向けて』 https://www.nri.com/jp/service/souhatsu/resilient NRI未来創発センター) 『SDGsの本質~企業家と金融によるサステナビリティの追及』(中央経済社)等。 米ブルッキングス研究所と毎年、世界のトップシンクタンク1位、2位を争う英国チャタムハウスでも勤務してきている数少ない日本人である。一般社団法人 SDGs Innovation HUB(SIH)/ Common earth Park international Community(CePiC)理事(アドバイザリー)、国家公務員

入江 真太郎氏
一般社団法人日本ワーケーション協会代表理事
長崎生まれ、茨城県出身。幼少期には東北地方、学生時代は四国と関西地方に暮らす。京都・同志社大学社会学部卒業。現在は大阪府在住で京都を事業拠点とする。(株)阪急交通社等で旅行業他様々な業種を経験後、ベンチャー企業から独立起業を経て、観光事業やその他海外進出支援事業等を展開。北海道から沖縄まで、各地と関わりを深めていく。各地で暮らした経験から地域共創や豊かなライフスタイルや働き方の実現に関心が高い。子ども環境情報紙エコチル西日本エリア開発室長。

松本 栄祐氏
株式会社IKETEL 代表取締役社長
「ガッツとテックで地域・社会のミライをつくる」をVision & Missionに、地域内外の繋がりと共創を通した地域の活性化、社会課題の解決に取り組んでいます。現在は外部人材×AI・ITを活用した地域・中小事業者向け商品開発支援サービスを実証中。
#世界で唯一「フグの毒を水で分解」した人
#前職はメーカーで設計・商品開発の仕事
#日本全国3周~/世界5大陸を渡航
#もくもく会/地域のMeetupイベント等を主催

モデレーターの上村遥子氏はビジネスに挑戦する方々の活躍の場作り、地域と都市部のオープンイノベーションを推進されています。2022年に長野市に移住され、東京と長野を行き来する生活を送る上村氏。宇宙科学の事業に関わる中で、積極的にフィールドに出て社会とのつながりをもつことの重要性を実感されたそう。

パネリストの一人である御友重希氏は、国家公務員として25年以上のキャリアを持ち、現在は、岸田内閣が「新しい資本主義」 の柱の一つとする内閣官房の「デジタル田園都市国家構想」応援団員として活動されています。

「グローバル視点から見たときに北陸新幹線の延伸と、2025年の『EXPO 2025 大阪・関西万博』(以降、大阪万博)のつながりは見逃せない」とコメント。

レジャーでありながら大きなビジネスマッチングの場でもある大阪万博。観光や企業研修など複合的な産業発展のチャンスとしても捉えられるといいます。

大阪万博時に訪日した人々の多くは関西圏で行動するはず。しかし、北陸新幹線が関西の入り口である福井・敦賀まで延伸することで、長野・軽井沢も彼らの行動範囲に入るだろうという話題に。。

一般社団法人日本ワーケーション協会代表の入江真太郎氏は、大阪府内に住まいを、京都市内に仕事の拠点を置き活動されています。

表題についてディスカッションする上で「関西と世界が繋がる入り口としての、関西空港の開発が今後のキーとなる」といいます。

ここ10年間、関西では「関西空港を軸としてアジアへどうアプローチするか?」という視点で開発が行われてきたそう。

また、現時点で北陸新幹線が京阪神まで延伸する流れこそないものの、延伸への期待を持っていると話す入江氏。「関西には2000m級の山が一個もないんです。関西だけで足りないコンテンツがあるので、カバーしあっていけるというのが長野に感じているポイントです」と、大阪万博開催時の来日者の動向に注目する姿勢を見せてくれました。

「関西から見た長野のイメージといえば、スキーや山登りといったアウトドアアクティビティのフィールドが思い浮かぶ」と言うのは、株式会社IKETEL代表の松本栄祐氏。


関西に住む松本氏にとって、信州は憧れの強い地域であるそう。その一方で、半導体メーカーや金属加工など精密機器の製造業が盛んな部分には、ものづくりの企業が多い神戸、大阪、京都との近しさを感じるといいます。新幹線の延伸によってそうした産業同士がつながり、活発化していくことへの期待が述べられました。

キーノートで登壇された浅生亜也氏も、パネルディスカッションのパネリストとして登壇。

ホテル運営の切り口から、実は長野県の北信地域のホテル従業員は、元々関西出身の方が多いことに言及。その理由として、スキー・スノーボードブーム時に関西から雪質のいいゲレンデを求めて長野にたどり着き、そのまま長野を気に入り移住されたのでは、とコメント。

関西と信州との関係性について、さまざまな意見が交わされた同ディスカッション。その他にも、パネルディスカッションではこのような話題が上がりました。

・関西は商圏としてアジアに目を向けている一方で、足りないコンテンツも。それらを長野県内から見出しカバーすることも大いにビジネスポイントになるのでは。

・観光が持つ「非日常」の側面ではなく、その地域でしか体感できない「豊かな日常」の提案は今後の観光においてヒントになりそう。

・地域の訪日者への対応として、今から外国語の習得の検討はもう遅い。地域の受け入れ体制の整備やお金のかからないシンプルにおもてなしの気持ち、自分たちが楽しむ気持ちが大切。

長野と関西の往来を増やしていくことで、アジアのビジネスと長野との繋がりを生むこともできると、期待に満ちた展望が語られた一幕も。山や雪といったフィールドや、信州の人々の人柄の良さ、ものづくりの土壌など、長野らしさを活かしながら各地の関係性をつくっていくことの重要性が語られたディスカッションとなりました。

イベントレポート後編では、ワーケーション、面白い仕事、越境人材といった異なるテーマをもとに行われた3つのブレイクアウトセッションについてレポートします。