バケーションだけじゃない!ワーク✕エデュケーションという可能性 駒ヶ根ワーケーション/堀田 直揮
コーディネーター紹介
企業研修と地域貢献のプログラムを組み入れた、独自のプログラムを提供する駒ヶ根ワーケーション。今回は、公益社団法人 青年海外協力協会(以下JOCA) 理事/事務局長の堀田さんに、駒ヶ根市がワーケーションに取り組む背景について伺いました。
途上国支援で培った経験やノウハウで国内の課題解決に挑む
―最初に初歩的な質問なのですが、堀田さんが所属されている「JOCA」とは、どのような団体なのですか。
まず、ご存知のかたも多いであろう「青年海外協力隊」の派遣事業をおこなっているのが、JICA(独立行政法人 国際協力機構)です。JICAは日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国が直面する課題を解決するための事業を展開しており、そのひとつに協力隊があります。
一方JOCA(公益社団法人 青年海外協力協会)は、その協力隊経験者が中心となって設立した団体です。実は、協力隊の派遣事業は50年以上の歴史があり、今では協力隊経験者は約5万人にものぼります。私たちは、各都道府県にある協力隊のOB・OG会をネットワークしているほか、途上国支援で培った経験やノウハウをもとに国内の課題解決すべく、様々な事業をしています。
― なるほど。例えばJOCAさんではどのような事業をされているのですか。
今、一番力を入れているのは地方創生事業です。政府が掲げる地方創生政策の一環である「生涯活躍のまち」づくりを実現するため、全国各地で様々なプロジェクトに取り組んでいます。
他にも、協力隊の経験を活かして、青年海外協力隊の育成や支援を行うとともに、グローバル人材育成や地域の国際化支援といった分野の事業も実施しています。
― もしかすると、堀田さんも協力隊OBですか。
はい、そうです。大学卒業してすぐの1999年に、青年海外協力隊としてジンバブエという国に派遣され、2年間現地で活動していました。
ジンバブエでは、「青少年活動」隊員として、スポーツ振興の活動に従事しました。競技指導が目的ではなく、若い世代の居場所づくりとしてのスポーツを推進し、エネルギーの発散場所をつくるといった内容でした。
―堀田さんはなぜ青年海外協力隊になろうと思ったのですか。
元々大学で国文学を専攻していて、卒業後は高校の国語の先生になろうと思っていたんです。でも、いざ就職活動というタイミングになったとき、「就職したらこの先40年間ずっと仕事をするのかぁ」と、ちょっと後ろ向きな気持ちになってしまって。
教師になる前に、少しだけ真逆のことをやろうと思い、回り道先として協力隊を選びました。その後、帰国してからはJOCAに所属し、現在に至るという感じです。
― そうなんですね。現在はどのような業務を担われているんですか。
今はJOCAの事務局長という立場なので、幅広くやっていますが、ここ10年近くは地方創生事業をずっと担当していますね。
長野県では駒ヶ根市版の「生涯活躍のまちづくり」も主担当としてご一緒させていただいています。
研修プログラムで新しい自分を発見!地域で学ぶワーケーション、という提案
―JOCAさんは、駒ヶ根市のワーケーション推進にも携わっておられます。なぜ駒ヶ根市と協同で事業をされているんでしょうか。
経緯としてはまず、JOCAとして地方創生事業に注力すると決めたとき、本部が東京にあるのはちょっと違うんじゃないかと議論になりました。
移転先を検討する中で、駒ヶ根には青年海外協力隊の訓練所があり、長きにわたるお付き合いがありました。そうした縁から本部事務所の移転先を駒ヶ根に決めたんです。
その後2018年に移転したのを機に、駒ヶ根市と地域づくりの連携協定を結び、駒ヶ根市版の「生涯活躍のまち」づくりをご一緒させていただくことになりました。その取り組みのひとつに関係人口の創出があることから、JOCAでも駒ヶ根におけるワーケーションの推進の一部業務を担っているんです。
― そもそもなぜ駒ヶ根市は、ワーケーションをすすめようと考えたのでしょうか。
「逆参勤交代」ってご存知ですか?三菱総研の松田智生さんが提唱されている制度なのですが、江戸時代の参勤交代とは逆で、都心に住む方の短期間の地方移住を制度的に後押ししようというものです。
駒ヶ根市はこの逆参勤交代に共感をしまして、ぜひ取り入れたいと三菱総研さんにお伝えして、以前からご一緒していたんです。 そんな中、ワーケーションがトレンドとして注目されるようになり、逆参勤交代と組み合わせながら関係人口創出のために何かできないかと…というところがスタートでしたね。
― なるほど。では、駒ヶ根ワーケーションはどのような特徴があるのでしょうか。
長野県には八ヶ岳や白馬、軽井沢などネームバリューがあるまちがたくさんあります。駒ヶ根市もアルプスに囲まれた自然ゆたかなまちですが、正直なところ県内の中では知名度やアクセス面で苦戦しがちです。
そこで、駒ヶ根市がワーケーション先として選ばれるためにはどうしたらいいかを考えた結果、テーマを「学びと交流」に絞ることにしました。昔から青年海外協力隊の訓練所があり、語学の速習をはじめグローバル人材やSDGsについて学べる環境がすでに整っていますし、地域そのものを学びの題材として開放していくことで、人を呼び込むことができたらと思ったんです。
ただ、さあこれからというタイミングでコロナ禍となり、企業の受け入れは残念ながらストップを余儀なくされてしまいました。
現在は制限が緩んできましたので、アップデートを重ねながら企業のみなさんにお越しいただけるよう、努めているところです!
オープンマインドで関わりしろがある、駒ヶ根というフィールド
―堀田さんからみて、 駒ヶ根ってどんなまちですか。
僕がよく言うのは、駒ヶ根は「非常にコンパクトなまち」。人口3万人と、こぢんまりとしていて、サイズ的にもフィールドとして捉えやすいんです。
あと、駒ヶ根っておもしろいなぁと思うのが、自治体や商店会、地域の人々が自分たちの課題をあけすけに喋ってくれるところ。
「いまこれに困ってるからどうにかならないだろうか」「これやろうとしているんだけど、うまくいかないんだよね」って、正直に話してくれる方がたくさんいらっしゃいます。
だから、「商店街巡ってこういうことしたいんだけど…」と相談しても、「わかったよ」って応えてくれるんですよね。
僕も全国各地いきましたが、駒ヶ根市はマインドがオープンで、外部の人と協働するのにぴったりなまちだなと感じます。なので、地域の困りごとをもとに、大学のゼミや企業向け地域貢献プログラムなど、まちを舞台にした研修やフィールドワークがしやすいのも特徴だと思っています。
― 解決を目指したい地域課題としては、どのようなものがあるのでしょうか。
他の自治体同様、中心商店街の衰退や少子高齢化、観光の振興などは課題ですよね。
あと個人的には、駒ヶ根は中途半端にデジタル化されているものが多いのが課題だと思っています。
例えば、市民の健康増進のため「健康ステーション」という、活動量計の普及プロジェクトをすすめているんです。しかし、その活動量計のデータをどのように活用するかという点では、出来ることがたくさんありそう…とか。
他にも、駒ヶ根って地域通貨の世帯普及率が日本でもトップクラスで結構みんな使っているんです。このデータも、もっと色々と活用できるのではと思うんですよね。
こうした点を企業の知見をもとに、新たな展開ができればとても素晴らしいなと考えています。
― 最後にこれからの目標をお聞かせください。
今後はこれまでの協力隊の育成ノウハウを活かした語学研修はもちろん、グローバル人材育成やリーダーシップ研修、駒ヶ根の地域課題を題材にしたプログラムなどの提供を、ワーケーションと組み合わせて提供していきたいです。
企業のニーズに応じて、研修プログラムをアレンジ出来るのも我々の強み。例えば午前中は仕事に充ててもらって、午後はたっぷり研修を受講いただくなど、柔軟なプログラムの展開も準備しているところです。
ぜひ駒ヶ根ワーケーションにたくさんの企業が来ていただけるよう、引き続き取り組んでいきたいと思っています。
駒ヶ根ワーケーション