仕事と遊びの距離を最短に 志賀高原「hiroen -日本で一番星に近いコワーキングスペース-」/井戸 聞多
コーディネーター紹介
長野オリンピックの競技会場としても知られる山ノ内町・志賀高原内に、2019年にオープンした「hiroen -日本で一番星に近いコワーキングスペース-」。標高約1,500mにある同施設は、目の前にゲレンデが広がるという絶好のロケーションを誇ります。今回は、hiroenの井戸さんに設立の経緯やこれから目指していることについて伺いました。
目の前はゲレンデ!リゾート✕ワークをかなえるワークスペース
―まずは、hiroen設立のきっかけを教えてください。
私は2019年に、横浜から志賀高原へ家族で移住しました。当時は会社員をしていたのですが、今ほどリモートワークが浸透していなかったので、会社にフルリモートの制度がなく…。ただ在宅勤務やコワーキングスペース利用は認められていました。
そこで志賀高原の中にコワーキングスペースをつくれば、「自宅最寄りのコワーキングスペースに出社する」ことになり、実質フルリモートができるのでは…とひらめいたのが実はスタートなんです。
―オープンまでには多くの方が関わったそうですね。
学生向けの教育プログラムを展開する株式会社Shinonome(シノノメ)と組み、内装は専門業者に発注するのではなく、東京で建築を学ぶ学生たちとつくりました。コンペ形式でアイデアを募り、施工も学生たちに携わってもらっているんです。
室内には、ゆっくり時間を過ごせるこたつスペースや大自然がみえる大きな窓があるブースなど、ワーケーションにぴったりなわくわくする空間となっています。
―hiroenは、目の前がスキー場という立地も印象的です。
そうですね、本当に恵まれた環境だと思います。
hiroenから歩いて50mほどのところにリフトがあるので、仕事中にスキーを楽しむことも可能です。私は、1日で何回、ゲレンデとhiroenを往復できるかチャレンジしたこともありますよ。3往復はできましたね(笑)。オンライン会議→スキー→オンライン会議→スキー…、最後もスキーして締めるみたいな。
あと、ゲレンデからhiroenまでどれだけ急いで帰ってこられるかという挑戦をしたことも。(笑)
移住のきっかけは家族の夢。エンジニアを育て、移住先でハッカソンの開催も
― 移住してみて、志賀高原の魅力はどんなところにあると思いますか。
国立公園があるというのは、すごく大きいと思いますね。
志賀高原は上信越高原国立公園の中に位置しており、自然の共生を実現するため法的に厳しく保護されているエリアや、地域社会の発展のため開発が許されているエリアなど、それぞれに分かれて管理されています。
ただ、豊かな自然が残る保護エリアにもハイキングでアクセスもできますし、開発エリアではリフトに乗ってスキーをすることができます。志賀高原の中で、さまざまな自然を楽しめるのは、面白い点だなと思っています。
それから志賀高原は標高が高いので、夏はとっても涼しいんです。真夏でも25度を超えないのでクーラーいらず。 風吹いてるだけで十分という環境は、体にとっても優しいでしょうし、すごく贅沢だなと思いますね。
― そもそもですが、井戸さんが志賀高原に移住された理由は。
理由は2つあって、ひとつは妻の実家が志賀高原で民宿をしていて、妻が家業に携わりたいという気持ちが強くなったこと。
もうひとつは志賀高原に来るたびスキーに親しんでいた子どもたちが、「スキーを本気で頑張りたい」、「オリンピックに出る」と言ったんです。私もスポーツをやっていたので、夢は自分で畳むまでは仕舞わずに挑んでほしいと思って。ただ当時住んでいた横浜では、本格的にスキーに取り組むのは難しい。そこで家族で志賀高原に移住しようとなりました。
― 現在はどのようなお仕事をされているのですか。
いまは独立して、hiroenの運営をはじめ、ITベンチャー企業の支援やコンサルティングなどをしています。
一番のメインは、学生にプログラミング教育を提供し、エンジニアを育てながらモノづくりをする実践教育プログラムの推進です。そのコミュニティでは全国各地の学生が集まっているのですが、過去には山ノ内町の代表的な温泉街である、渋温泉に学生たちを集めハッカソンをやったこともあるんです。
温泉街の困りごとをプログラミングで解決をめざすというもので、学生たちは限られた時間の中で一生懸命考えて発表してくれました。最終的に組合長も少しウルウルしながら感謝してくれて。
―それはいい機会ですね。
学生にとっては目の前にクライアントがいて、要件に対してどんな価値を提供すればいいのかという勉強にもなるし、地域にとっては若い人がたくさん来てくれて、交流自体にも価値があるなと感じました。
また、学生のうち初めて山ノ内に来たという子も9割以上だったので、渋温泉を知ってもらうという意味でもすごく良かったのかなと。いずれ社会に出て、ワーケーションを考えたときに山ノ内が候補のひとつに入ってくれたらうれしいですよね。
このように、地域の課題に対するハッカソンを開催するというのは、いろいろ効果の矢印があることを実感しました。今後は長野県内の自治体や企業とハッカソンを一緒に出来たらと思っています。
自ら体現する、リゾートテレワーカーとしての日常
―ちなみに、いろいろなお仕事されていますが、普段はどんな肩書きを名乗っていらっしゃるんですか?
最近は説明するのが面倒くさくなっちゃって、リゾートテレワーカーと名乗っています。
おかげさまで仕事が多岐にわたってきて、説明が難しいんですよね。
リゾート地でテレワークして仕事してる人だし、それでいいかなって。(笑)
―なるほど。では、リゾートテレワーカーの日常を教えてください。
子どもたちがスキーしているところを見ながら、パソコンで仕事のチャットを送ったり、スマホからオンライン会議に入って話したり…って感じですね。
コーチが見てくれているので、私がずっと見ていないといけないわけではないのですが、その場にいて子どもたちを見守っていることが大事なのかなと思っていて。
―子育てと仕事は意図的に近づけようとしているのですか、それとも結果的にそのようなかたちになったのでしょうか。
意図的ですね。
サラリーマンをやっていたころは、子どもと過ごせる貴重な夜の時間もつい仕事が入ってしまって、なかなか子どものことを見られなかったんですよね。それがすごくもったいないなと思ったんです。
志賀高原に住んでからはできるだけ子どもたちと一緒にいて、学校に行っている間に仕事をやっておくといった工夫をして、意図的に子どもたちの活動に仕事の方を合わせているという感じです。
―最後に、これからの展望についてお聞かせください。
まず、自分がリゾートテレワーカーとして仕事しているっていうことがライフワークなので、やり続けて発信をしていきたいというのがまず一つ。
そして、共感してくれる人たちや地元の人、地域外の人が気軽に集まれるような取り組みをしたいですね。繋がりから繋がりを呼んで、輪を広げていけたらと。
相談を受けて、面白いものや新しいものを作っていくことが、元々得意分野なので、そうしたことにもどんどん取り組んでいきたいと思っています。
―リゾート地でテレワークするスタイル、もっと根付くといいですよね。今後どんなチャレンジをされていくのか楽しみにしています!
hiroen -日本で一番星に近いコワーキングスペース