森に囲まれた自然豊かな革新的ワークスペース「信濃町ノマドワークセンター」/網野 葵
コーディネーター紹介
町営の施設をリノベーションし、2019年に誕生した「信濃町ノマドワークセンター」(以下ノマドワークセンター)。都会のオフィスと変わらないスペックの設備を持ちながら、どの場所からも雄大な自然が眺められるワークスペースです。ノマドワークセンターの網野さんに施設の特長やこれから目指していることについて伺いました。
自然の中でリフレッシュしながら働く、というワークスタイルの提案
― まず、ノマドワークセンターはどのような施設なのか教えてください。
ノマドワークセンターは高原の中にある法人向け貸し切り型リモートオフィス施設です。信濃町の遊休施設の利活用の案として、Nature Service がノマドワークセンターとしての再生を提案。協定を結び、共同プロジェクトとして設立されました。
企業の皆さんに自然の中で心身ともにリラックスしながら仕事を進めていただけるような施設となっていて、豊かな森をのぞむ広いワークスペースと中規模な会議室を有しています。内装やインテリアも木目調で統一し、リラックスムードが漂う非日常空間でお過ごしいただけるのも特長です。
30〜40名ほどのプロジェクトやチームのメンバー単位でお越しになり、1泊から1週間くらい滞在されるケースが多いですね。
― ワークスペースを数十人で貸し切りができる施設は長野県内でも珍しいですよね。
そうですね。全棟貸しができるのはノマドワークセンターの強みの一つです。
企業の中には、社外の人も行き交うワークスペースだと情報セキュリティ面での不安があるという声も聞きます。貸し切りにすることで、安心してチームの皆さんで働ける場を提供しています。
また、高速インターネットやコピー機、3Dプリンターやレーザーカッターなどを備えた工作室もご用意しており、日々の業務を止めることなく過ごしてもらえるような環境づくりにもこだわっています。
― 2019年に開業されたとのことですが、これまでの中で利用企業の傾向はありますか?
業種の偏りはあまりなく、幅広い業種の方にお越しいただいています。例えば、最近ですと、外資系企業のマーケティング担当の方々や、とある企業では2年目研修としてこれまでのフィードバックとこれからを見つめる場として利用いただきました。
お越しいただく企業の共通点としては、フルリモートのため同じチームで仕事しているのに、なかなか会えないことに課題感をお持ちだということですね。
「チームビルディングの取り組みとして、ノマドワークセンターでの滞在を選択した」とお伺いすることが多いです。この場所で一緒に森林セラピー®をしたり、野尻湖でのアクティビティを体験したり…といった時間を通して、チーム同士の結束力を高めようというケースが多いのかなと感じています。
― お話に出てきた「森林セラピー®」とは何でしょうか。
森林セラピー®は、森の持つ癒し効果を利用しながら、身体と心の回復を目指して森へ出かけることです。信濃町は森林セラピー®の先進地で、信濃町公認資格「森林メディカルトレーナー」を持つスタッフが森の中で五感を解放し、癒し効果を高める手伝いをしています。
森林セラピーでは、自生する植物の説明や森の中で身体を解放するためのアドバイスをもらいながら、森を歩くんです。
自然の中で自分自身と向き合い、マインドフルネス的な時間を過ごすことができるので、「リフレッシュできた」とか、「考え方がほぐれて仕事も捗った」といった声もよく聞きます。
都会にお住まいだと、「森に入る」ということ自体が貴重な経験。森林セラピー®は、まさに信濃町ならではの過ごし方ですね。
― なるほど。季節によって違うと思いますが、信濃町では他にどのようなアクティビティを体験できるのですか?
信濃町には、長野県で2番目に大きい「野尻湖」という湖があります。こちらではSUPやカヤックなど、ウォーターアクティビティを楽しむことができます。
あとはメディアでも数多く登場している、フィンランド式のアウドドアサウナ「The Sauna」も体験いただけるメニューのひとつです。
このように町内には様々なアクティビティを提供している事業者さんがいらっしゃるので、企業のリクエストを伺いながら、一社ずつ滞在プログラムを策定しています。
― アクティビティを組み合わせる場合は、みなさんどのようなスケジュールでお過ごしになるんですか?
1日中アクティビティに費やすというケースはほとんどないですね。
例えば、午前中は普通に仕事してお昼を食べた後に、アクティビティを提供する事業者さんがノマドワークセンターへお迎えに来て、みんなで出かける…といった過ごし方が多いです。
半日お仕事しつつ半日リフレッシュして、最後少しメールチェックしてお宿に帰るというようなかたちで、仕事とアクティビティを両立していらっしゃいます。
人の繋がりを感じられる、信濃町のエリアマネージャーという仕事
― 続いて網野さんご自身のことに話を移したいと思います。ノマドワークセンターに着任されたはきっかけは?
私は子どものころから、環境問題に関心があり、大学では環境科学系の分野を専攻していました。なので、社会人になっても自然に触れる仕事や自然に関わる仕事がしたいなっていう想いがずっとあったんです。
新卒の就職活動中に、ノマドワークセンターの求人を見かけて。自然を身近に感じてもらうことや町を好きになるきっかけを作れる仕事って素敵だなと思い、応募したんです。
そして、ノマドワークセンターを運営するNatureServiceに新卒で入社したのが2021年4月。ようやくいま2年が経つところです。
― 今、ノマドワークセンターではどのようなお仕事を?
信濃町のエリアマネージャーとして、このノマドワークセンターのフロント業務を担当しています。でも、もうほとんど何でも屋さんみたいな感じですね(笑)。
主としては、企業からお問い合わせをいただいたら、まずはご希望の滞在期間や滞在中にどのような仕事をしたいのかを伺い、目的にあわせて必要機材などの全体的なプランをご提案します。またチームビルディングが目的であれば、アクティビティの事業者や飲食店の手配も私が対応させていただきますし、もちろん滞在中のサポートも。だから本当に何でもなんです。
最初はゆかりのない土地に来て、右も左もわからない状態でしたが、信濃町の皆さんにとても良くしていただいて。利用者の宿泊先や食事、アクティビティなど、地元の事業者さんとの連携なくしては本当に何もできないんです。
皆さんがすごく優しくしてくださるので、なんとかなんとかやってこられたなって感じですね。
― やりがいはどのようなときに感じますか?
利用者の皆さんに「やっぱり信濃町ってすごくいいところだよね」とか「来てよかった」というお声をいただいたときは嬉しいですね。一方で、地元の事業者さんに「いつも頑張ってるね」ってお声をいただくこともあるんです。
そうやってどちらからもお声をいただけて…。本当に人の繋がりを感じられるお仕事だなって思いますね。
― ノマドワークセンターは12月から4月まで冬季閉鎖とのこと(※2022年度)。オフシーズンはどのような業務をされるんですか?
信濃町は雪深い地域で、ピーク時には積雪が2メートルを超えるほどなんです。
そのため冬場は施設を閉鎖しているんですが、この期間はマーケティング施策の検討や情報発信などをしています。
仕事の生産性と自然との触れ合いに関するセミナーの開催なども予定しています。
― 今後について考えていらっしゃることは?
これからの目標としては、利用者の皆さんに信濃町を好きになってもらうのはもちろん、ゆくゆくは地域課題に触れられる施設としての機能を持たせたいですね。
昨今、企業では持続可能性やSDGsを念頭に置いた企画や方針の策定が必要不可欠となってきました。そうした流れの中で、企業の技術と地方の生の声が交わる場所や、お互いに意見を交換して活かしていくためのきっかけづくりができたらと思っています。
企業としてはSDGsの取り組みとして地域課題の解決に寄与することにもつながりますし、自治体としても地域課題の解決に向けて企業と話ができるのはすごくいいこと。そうした場所に、このノマドワークセンターをしていきたいんです。
また、他の地域にもノマドワークセンターが作れたら、利用者さんがいろんなところを選べるようになるので、拠点の拡大も目指していきたいですね。
― それは素敵ですね。ますますのご活躍、応援しています。
*森林セラピーは、森林セラピーソサエティの登録商標です。
信濃町ノマドワークセンター:https://nwc.natureservice.jp/