「たつのWORK TRIP」からはじまる地域と企業の関係人口/電通国際情報サービス

事例紹介 

地域で進行中のプロジェクトに関われる「共創型ワーケーション」や、社会課題解決型ビジネスの創出実験場としてのワーケーションを提案する辰野町の「たつのWORK TRIP」。昨年から辰野町と協働で、ワーケーション予約のプラットフォームの開発に取り組んでいる株式会社電通国際情報サービスの西川敦さんに、取り組みのきっかけや活動されていくなかでの本音について伺いました。

「人」が魅力的な辰野町と出会って。

―辰野町と出会ったきっかけは?

2021年に、課題をもつ自治体と解決に挑む県内外企業とのマッチングを行う、「おためし立地チャレンジナガノ」(長野県庁主催)というプログラムで、辰野町をご紹介いただいたのがきっかけです。

もともと、弊社が参画する運輸デジタルビジネス協議会では、数年前から観光地での訪日観光客の移動や回遊促進の実証実験、いわゆるMaaSに取り組んでいました。

コロナ禍で研究テーマがワーケーションとMaaSの組み合わせへとシフトしていたところ、交通やワーケーションに興味をもつ辰野町さんと出会い、プロジェクトがはじまったという形ですね。

―辰野町を訪れた際の印象を教えてください。

マッチング後の2021年12⽉に、現地で⾠野の⽣の声を集める機会をいただいたのですが、辰野町って若い人たちが自分で新しいことを作り出していこうっていうパワーがものすごい町なんです。

例えば、商店街に見学に行ったら、まさにビルの天井や壁紙を剥がして、DIYをしている現場に出会いまして。
「これからみんなでコワーキングスペースを作るんですよ」と。

商店街の新しいカタチを考えるプロジェクト「トビチ商店街」

我々も新しいサービスをつくっているところなので、そういうのを見ると非常に共感するものがあって。こういうチャレンジもあるんだ、と元気をもらえるんです。
土地の魅力だけじゃなくて人の魅力がある、すごくいい町だな、と感じましたね。

―その後、実際にチームでワーケーションをされたとのことですが、どのような行程だったのでしょうか。

はい。2022年6⽉に、弊社の東京と名古屋のメンバー、7名ほどでワーケーションしました。2泊3日で、プロジェクト始動に際してワーケーションについて考える合宿を兼ねて、自分たちもワーケーションを楽しむ機会として実施しました。

薬膳料理づくりのワークショップや焚き火を囲んで話す時間などアクティビティも用意しました。商店街でのリモートワークや散策などのフリータイムも設けて、メンバーにはそれぞれ時間の使い方を決めてもらうようにしました。強制参加になると、義務的でやらされている感が出てしまうんですよね。個人の気持ちや仕事の進捗を重視して、自由度を持たせたプランにしました。

チームが地域の中で、時間と場所をある程度共有しながら、やりたいことをやる。そして、それぞれのメンバーが関係性を深めたり、何かを得たりすることができれば、それがハッピーだなと思ったのです。

辰野町でのワーケーションをきっかけに開発しているサービスとは

―現在は辰野町と協力して、サービス開発をされているそうですね?その概要を教えてください。

簡単にいうと、ワーケーションのマッチングプラットフォームをつくろうとしています。

どういうワーケーションにしたいかって、企業によって全然違うんです。なので、ガッツリ仕事したいとか、地元の人と交流をしたいとか、いくつかの設問を選ぶと、数ある自治体の中から一番マッチするところを選べる、そんなサービスを開発しています。

ゆくゆくはそのまちで体験できるプランの提示や、まちの人との接点を増やすための仕組みも検討中で、企業にとっても町にとっても、ワーケーション体験の満足度を上げられるようなサービスを目指しています。

最終的に、このサービスを使えばワーケーションの予約からスケジュール管理、コミュニケーション、支払いまで、ワンストップで対応できて、地域での移動が広がるMaaSとも組み合わせができたら、と考えています。

―ローンチの目標はいつごろなのでしょうか。

まずは我々のなかでの研究開発投資という感じなので、いまはいろんな方の意見を伺いながら少しずつ開発しているのですが、年内のプロトタイプの完成を目指しています。
早く開発して、辰野町のワーケーションコーディネーターさんの負担をシステム化することで少しでも助けてあげたいですね。

―そもそもワーケーションに着目された要因とは?

働き方の自由度が高まっているなかで、普段あまり行けないような地域に行ったり、非日常体験を組み合わせたりできるワーケーションの価値をもっと活かせないだろうか、と考えていました。

また、自治体のワーケーションのPRでありがちなのが、「こんなにいい景色が見れるんです」「Wi-Fiがちゃんとあります」って話や、観光の文脈で「こんなアクティビティができます」ってバケーションにフォーカスした内容。

でも企業目線でいうと、それらは全然魅力ではないんですよね。あまたある自治体のなかから、自社に相応しいワーケーションの場所を探すだけでも一苦労なのに、なかなか企業が求めるワーク面に関する情報発信が少ないんです。

チームのパフォーマンスを上げるためのプログラムやワークが捗る工夫など、そのまちに行くことによって、どんな価値を受けられるのかという点こそ、セールスポイントになりますし、企業誘致としてそうした取り組みをしていく必要があると思ったんです。

地域と企業、仕事に特化したビジネス関係人口の可能性

―企業が地域と協働することの魅力は?

個人的な感想ですが、活躍している人と出会い、話をしているだけでも刺激になりますね。みなさん様々な経験をされていて、生き方や活動にも力をもらえます。

ついつい、業界に長くいたり、目の前の仕事だけに向き合ったりしていると、狭い視点になっちゃうときがありますよね。そういった点でも、新鮮な体験を取り入れることは大切だと思いますね。

また、個人の観光だと観光資源の豊富なところが選択肢に上がりがちですが、企業こそが辰野のようなキラリと光る魅力的なまちに価値を認めて、そのまちに行くきっかけとしてのワーケーションや合宿がこれから注目されてくるのではないでしょうか。

社員たちが地元の方々と関係性を結び、いわゆる関係人口として、一人でも多くのひとがそのまちへの愛着を深める契機になれば、地域を盛り上げる一助にもつながると考えます。

―地域でビジネスやプロジェクトの開発を実施するなかで気をつけることがあれば教えてください。


企業によって、自社サービスを提供するのか、地域課題を解決を手伝うプロジェクトを新規で開発するのか、あるいは社会貢献なのかなど、取り組み方は様々あるかと思います。

企業側も、地域とどんな取り組み方をしたいか、地域に対してどの部分で貢献できるかをしっかり提示することが必要です。

また、地域からすると、急に東京から来て、協力しても結局東京に全部持っていかれて何も残らないんじゃないか?と感じることもあるみたいなんですよね。なので、しっかり地域と一緒になってビジネスを作ったり、地域経済にメリットがあったりするよう、お互いがハッピーになれる地域との連携を目指してほしいです。

何ができるのかを考えるうえで、やっぱり「人」は欠かせません。地域に住んでいる人たちを知らないと、次に進めないと感じました。辰野の場合は、地域おこし協力隊やコーディネーターの方が、前述の商店街でDIYしているところや地元のお母さんたちに料理を学ぶ体験など、地域との「関わりしろ」を示してくれたことで、自分自身も積極的に人やまちのこと知りたい、と強く思えました。

地域と関わる一歩としての、ワーケーションが広がることを願っています。

何ができるのかを考えるうえで、やっぱり「人」は欠かせません。地域に住んでいる人たちを知らないと、次に進めないと感じました。辰野の場合は、地域おこし協力隊やコーディネーターの方が、前述の商店街でDIYしているところや地元のお母さんたちに料理を学ぶ体験など、地域との「関わりしろ」を示してくれたことで、自分自身も積極的に人やまちのこと知りたい、と強く思えました

地域と関わる一歩としての、ワーケーションが広がることを願っています。


<お話を伺った人>
電通国際情報サービス
スマートソサエティセンターサステナビリティ
ソリューション部 先端サービスG
西川 敦さん